この場所で

2014年1月27日 日常
以前、あなたが所属していた機関のホームページを開いたのは偶然の事。

私たちが、最後にことばを交わしてから、もう7年もの時が過ぎていた。

7年は長いよね。
私は結婚して、まじめで優しい夫と、1人娘と3人、穏やかな日々を過ごしていた。

時折、あなたを思った。
あなたもきっと、あなたの周囲の人も賛成していると言っていた人と、しあわせにしているのだろうと思っていた。

私たちは。
いつか、きっと、今度こそ、本当に友人として会える日が来ると信じていた。

あの日、あなたが言った「幸せになったらええねん。」という一言は、友人のフリをして、あなたのそばに居続けた私にとって、決定的な一言だった。

「おねがい、私を引き止めて。」ありったけのねがいを込めて伝えた思い。それは、あっさりと打ち砕かれた。

今も忘れない。

あの日、あなたの車を見送った。
バックミラーが涙でにじんで、ぼやけて見えた。

短い間だったけど、あなたは私の恋人だった。
けど、そのころ、私はあなたに何をしてあげることができたんだろう。
嫌いになられても仕方の無いことばかりした。
それでも、たとえ、形が変わっても、結局はそばにいてくれたあなたの大切さに気づいたころは、もう遅かった。

だけど。

喉が痛いって言えば、そんなにいっぱい・・ってくらい、のど飴を買って駆けつけてくれた。
PCの調子が悪いと言えば、ソフトを持って、すぐに来てくれた。
悲しいことがあった日は、ただ、そばにいて、手を繋いでいてくれた。
何時間も、えんえん愚痴を聞いてくれた。

いつも「おまえは大丈夫」って言ってくれた。

酔っ払った私の手を引いて「いい加減にしろや」って言いながらも家まで送ってくれた。
ベランダで、星とか山を見た。

しあわせだった。
しあわせすぎるくらい、しあわせだった。

空を見上げる。

昔、私たちが、アメリカと日本で離れていたころは、それでも空を見上げれば、私たちは繋がっていると思えたのに、今は、どんなに空を見上げても、この空の向こうにあなたがいるなんて思えない。

どこ?

ふと思ったの。
朝から降り続いた雨が上がって
雲と雲の間から
射し込んだ
光に目を細めたとき。

亡くなったなんて言われても
そんなこと
どう理解しろっていうの?

あなたがいないなんて。
あなたに会えないなんて。
もう、話すこともできないなんて。
どう理解すればいいの?

だって、あなたは生きていたの。
私のこころの中、何年も。
辛くても、寂しくても、あなたの存在が私を支え続けてくれた。

もう少し、もう少しだけ
自分に自信が持てたら
きっと、会いに行ける
そう信じていたのに

死にましたって、死って何?
あなたをどこに連れて行ったの?
あなた、どこにいるの?
また、お酒飲んで項垂れて、どこかで寝てしまってるんじゃないの?

迎えに行かなくちゃ。

あの頃のように。

何時でも駆けつけてたあの頃のように。

死んだからって
おねがい、神さま、私から彼の声を奪わないで。
彼のぬくもりを奪わないで。
彼の記憶を奪わないで。

神さま
彼はどこにいますか?
寂しがりやなんです。
平気なフリをするんです。
自分が一番大切だって分かってるくせに、自分を押し殺して無理をするんです。
つよがりなんです。

神さま。
彼のいのちは、こころは、どこに行ってしまったのですか?
探しているんです。
ずっと。
会いたくて会いたくて、探し続けているんです。

おねがいです。

彼に
彼と
会わせてください。


あなたは

それでも
わたしのしあわせを祈ってしまう
そんな人だったと思う

憎んでほしかったなんて言えるほどの正直さも強さもない
裏切られたと責めてくれればいいと言えるほどのしたたかさもない

あなたは
あなたのこころの中に
自分が悪かったのだと、自分を説き伏せることができるほどに
私に救いを求めながら、私を遠ざけたのだから。

分かっていて、そうしていたのだから。

逃げ場のない人生を歩めない私たちは
似た者同士だったんだ
だから寄り添い
自分を責めるように互いを責め
互いを責め合いながら、自分を責めた

そうして私たちは
互いの人生に許しを求めたのかもしれない

寂しさを埋めあうかのように
そばにいたわけじゃない
私たちは
二人でいても寂しかった
ただ
それぞれの憂鬱をそれぞれに抱え、それぞれが踏み込むことなく
それは手放せるものではなく
それは解放されるものでもなく
手放すことも、解き放たれることも求めず
寂しさを互いの一部として生きることを選んでいた

あなたは、ただ静かに時を感じているようだった。
わたしは、果てしない憂鬱の迷路から抜け出そうともがいた。

あのとき、あなたはもう知っていたのかもしれない。
憂鬱と人生を切り離すことなどできないことを。



あなた


私は
あなたから逃げたの?
あなたの元から飛び立ったの?


瞳の奥
映った私は
しあわせに微笑んでいましたか


寂しさを分かち合うことを
こころから望んだとき
そのときは
きっと分かち合うこともできたはずなのに
分かち合おうとしなかったのは
私だったのかもしれない


もう
あなたの返事を
どうしたって聞くことが出来なくなったいまも
あなたに語り続ける私は
憂鬱と共に生きる私の人生を
厭うのではなく、愛したい
そう思いはじめています。


あなたの
文字を見て思う

あなたの
声を耳の奥かすかに思い出して思う

あなたの
いろんなあなたの表情を振り返って思う

わたしは
あなたと
もっと話したい。
もっともっと話したい。
あなたに、話したい。
聞きたい。
ゆっくりでいい。
ゆっくりがいい。
あったかいコーヒーでも飲みながら
公園でも散歩しながら
ドライブでもしながら
いっしょの布団にくるまりながら

あなたと
過ごしたい時間が
たくさんあったの。

なのに
どうして
あなたはわたしを
置いて行ってしまったの?
わたしが
あなたを置いて行ってしまったの?

ちがうでしょ?

だって
幸せになったらいいって言ったじゃない?

あなたは言ったよね?
欲しいのは、甘くて溶けてしまうような幸せじゃないやろ?って。

なのに

あなたは
甘くて溶けてしまうような幸せを
あの日
わたしに薦めたじゃない?

わたしはね

わたしは

甘く、溶けてしまうような幸せがほしかったんじゃない。

あんたが
苦しいなら
苦しんでいるなら
あんたの100倍苦しんで
あんたが
おちおち苦しんでいられへんようなわたしでよかった。
あんたが
心配すぎて
とてもじゃないけど
置いて行かれへんようなわたしでよかった。

しがみついたって
あんたを
逝かせたくなんかなかった。

それが分かってるから
わたしの背を押したの?

それとも
もう
わたしが
いらなかったからそうしたの?

どんな返事も返ってこない日々に壊れてしまいそうになる。

それでも、勇気のない私は、もう知りたいとは思わない。
何も知らなくていい。
知らないまま、あなたにずっと、私のこころの中で生き続けてほしいと思っている。




コメント

na

最新の日記 一覧

<<  2025年7月  >>
293012345
6789101112
13141516171819
20212223242526
272829303112

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索